新家達弥
新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 会員

深掘りと仮説で分析をブラッシュアップし、クロス SWOT 分析へ

前稿で、SWOT 分析の結果として、内部環境の強みと弱み、外部環境の機会と脅威の項目を抽出して、マトリックスに纏めた所までを説明した。その結果から戦略立案に移るが、その場合に抽出した項目について深掘りと仮説のプロセスで分析をブラッシュアップして
おくことが重要である。
例えば、外部環境の PEST 分析で「少子高齢化」を抽出した場合、子供用品メーカの場合は、子供の数が減少することはその市場が縮小することを意味し「脅威」に分類される。しかし、少子化は家族構成で見ると、一人っ子の比率が高くなる家庭が多くなることから一人当たりの子供に支出する金額は、複数の子供のいる家庭と比較すると多くなる可能が高いと仮説することができる。即ち質の高い子供用商品に関しては購入する家庭が増える可能性がある。その場合は、他社より質の高い子供用商品を提供できる企業にとっては、「脅威」でなくプラスの「機会」と見なせる。これは、リッチな高齢者が孫のために高いおもちゃなどの購入をすることが増えてくることからもプラス要因として捉え、自社の強みを活かした高品質な子供用商品の事業を強化する戦略の選択が可能である。

このように、外部環境を深掘りして自社の強みを発揮して行く分析は経営資源が少ない中小企業にとっては重要なことである。このためにも、経営者は最初の SWOT 分析の結果で納得するのではなく、「脅威」が「機会」になることは無いか、そこに自社の強みを活かせないかを仮説検証して、SWOT 分析の結果を吟味するプロセスは欠かせない。更に、将来どうなるかという時間軸の変化も洞察しておく必要があり、また経営者の問題意識が盛り込まれたものになっているかを確認すべきである。

SWOT 分析の結果得られた「機会」と「脅威」に対して「強み」と「弱み」を組合せることで、4つの戦略パターンが考えられる。即ち、強みを発揮して機会を活かす「強み×機会」の積極化戦略、強みを利用して脅威を回避する「強み×脅威」の差別化戦略、弱みを改善して機会を活かす「弱み×機会」の改善戦略、脅威の影響を最小限に抑える「弱み×脅威」の防御的戦略である。
このように、内部環境と外部環境を組み合わせて、戦略の方向性を検討する分析を「クロス SWOT 分析」あるいは「SWOT 分析クロス」と言い、下図のように纏める。(出典:中小企業庁 HP の資料図)

以上の説明からわかる通り、SWOT 分析の目的は勝ち残る戦略をたてることであるので、単に内部環境や外部環境から強みや弱み、機会や脅威を抽出しただけのものでは不十分であり、クロス SWOT 分析まで行わなければ意味をなさない。そして、環境に変化があったときには改めてクロス SWOT 分析までを行い、現在の戦略の見直しやブラッシュアップをすることが重要である。
次稿で、クロス SWOT 分析について追加説明をする。 (MOTIP 新家)