新家達弥
新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 監事

ニッチ戦略は、限定された領域で実質的な独占が可能となり、大きな発展はないがそれなりの収益を得て、安定した事業を営むことができる。この戦略のポイントは製品としては決定的に重要であるがほとんど目立たず誰も競争しに来ないところを狙うことである。
この戦略には三つあり、中小企業は自社の特徴や能力に合わせて採用を検討する必要がある。三つの戦略とは、① 関所戦略、② 専門技術戦略、③ 専門市場戦略である。

① 関所戦略とは、その業界や市場において、誰もが通らなければならない(使わなければならない)プロセスにおいて不可欠な位置を押さえる戦略である。このプロセスを通らなければ商品やサービスが成り立たないことから関所戦略と言われる。この戦略はいったん関所を占めると一社で独占できるというメリットがあるが、条件やリスクもある。
条件はその商品が必要不可欠なものでなければならないこと、顧客の需要がある間は勝手に変えることができないという制約があることである。このため顧客の需要の減退が起きたり、需要を満たす他の有力な方法が発見されると、それに伴って急速に陳腐化す
るリスクがある。

② 専門技術戦略は、他社の追随を許さない専門的な技術により、特定の市場やその一部を支配する戦略である。この戦略は、新しい市場が立ち上がる段階で、自社の専門技術が活かせる場合に有効である。そのためには、自社の得意技術が生かせる分野がないかを体系的に探索しておくことが重要である。このためには、自社の専門的、独自技術を確立しておくと共に、ニッチ市場を占拠したら、他社の追随を許さぬように専門技術の向上を継続して行うことが必要である。その専門技術が極めて先進的で、他の企業が挑戦する価値がないと思われるようになり、その技術が基準となる地位を占めるのが理想である。
ここで注意すべきことは、専門技術によるニッチ市場は偶然見つかることはほとんどないため、新しい市場、産業、傾向が現れたら、出来るだけ早く専門技術を活用したイノベーションの機会がないかを探すことが大切である。
専門技術戦略には限界もあることを留意しておかなければならない。一つ目は、支配的地位を維持して行くために、狭い領域、専門分野だけに焦点を絞らざるを得ない。二つ目は、専門的であるために、要素や部分品となり他の所では他社に依存しなければならないという制約・弱みがある。三つ目は、最も大きな危険として専門技術が専門技術でなくなり、一般化してしまうことである。この様に時間的、領域的に限界はあるが、その限界の枠内では専門技術による地位の獲得戦略は有利であり、急速に成長しつつある技術、産業、市場では最も有効な戦略といえる。

③ 専門市場戦略とは、市場についての専門知識を活用して、ニッチ市場を占拠する戦略である。この戦略は専門技術の知識と市場の知識の違い以外は、前者の専門技術戦略とほぼ同じである。

次稿で四つ目の価値創造戦略について説明する。
(MOTIP 新家)