新家達弥
新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 会員

SWOT 分析のアプローチ

前稿で、SWOT 分析では内部環境の「強みと弱み」、外部環境の「機会と脅威」を抽出し、そこから戦略を立てると説明した。ではどのような手順ですすめるのが良いのかを筆者の
経験から紹介したい。

前稿での孔子の言葉にあるように、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」を実践することであるが、その前に、5W の確認が必要である。即ち「Why;何のために、目的は何?」、「Who;顧客は誰で、ライバルは誰か?」、「Where;自社が戦う市場は何処か、どこで変化が起きているか?」、「What;目標は何か、何が問題となっているのか、商品/サービス/プロセス/組織/の何が課題か? 何をすべきか」、「When;何時迄に対応しなければならないのか?」である。即ち、自社のプロフィールとして、事業の種類、競争の状況、事業上の課題、経営者の方向性などの資料を用意し、また「顧客が自社の何に価値を感じて、購入(お金を払って)してくれるのか」を把握しておく。

次に、外部環境のプラス要因とマイナス要因の抽出であるが、PEST 分析のフレームワークを参考にするのが良い。PEST 分析は、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の四つから、企業をとりまく環境の変化や事業活動に影響を与える要因を抽出し、プラス要因は「機会」に、マイナス要因は「脅威」分類する。例えば、急激な円安は輸出企業にはプラスとなるが、輸入企業にはマイナスとなるなど。ここで P は規制緩和や税制変更などが、E は経済成長率や円安円高の為替変動などが、S は少子高齢化の人口動態や地球温暖化対応などが、T はロボットや AI などの技術革新やスマホ活用技術などがあげられるが、この時注意することは、情報の質である。調べれば調べるほど情報は収集出来るが、上記5W で確認した自社に関連するものだけを取捨選択し、無関係な情報の収集や分析に無駄な時間を取られないようにすることである。また、この時に現在の環境だけでなく、将来の環境変化も予測する。

内部環境の要因の抽出では、3C 分析や企業情報が参考となる。3C とは、Customer(市場・顧客)・Competitor(競合)、Company(自社)を示し、前二項は外部環境要因と重複する部分もあるが、あくまでも、顧客に対して自社が選ばれる理由やライバル会社に対して自社が優位性を持つ内容などのプラス要因(強み)とその逆のマイナス要因(弱み)を抽出して行く。また、自社の経営資源から強み、弱みを抽出する場合、前稿で示したように、自社が持つ有形・無形の資産である「人的資産、土地、立地条件、生産設備、特許などの知的資産、ブランド力、ノウハウ」などから自社の特徴を纏め、これを長所と短所の視点で分類するとよい。例えば、経営者がオーナーであるという特徴は、長所は、経営判断プロセスがシンプルで早いとなるが、短所は反対や忠告意見を十分検討せずに独断するリスクがあるなど、強みは反面で弱みとなる場合があるので、忘れずに書き出す。以上の抽出したものを下記のマトリックスに纏める。

プラス要因マイナス要因
内部環境強み(Strength)
自社の持つ強みや長所、得意なことなど
弱み(Weakness)
自社の持つ弱みや短所、苦手なことなど
外部環境機会(Opportunity)
社会や市場の変化などでプラスに働く
こと
脅威(Threat)
社会や市場の変化などでマイナスに働
くこと

SWOT 分析の結果が出たら、これらの内容を組み合わせて戦略を立てるステップになるが、これは次稿で説明する。(MOTIP 新家)