落合克弘
落合克弘

㈳技術知財経営支援センター 理事

私は大手メーカーで新規事業の開発やマーケティング、生産、販売などに関わってまいりました。その間に技術士(電気・電子)の資格を取ることができました。しかし、技術の違ういくつかの新規事業に携わったために、自分のコアとなる技術の足場をしっかり構築できませんでした。
そんな会社員生活の終盤、退職の5年前より知的財産室の所属となり、発明を生む側から発明を出願する側に立場が変わりました。その時、これこそ私のコアとする仕事にできる、と直感いたしました。その直感があっていたかどうかは置いておき、退職して3年、この知的財産の分野で仕事を続けられているのは、たいへん幸せなことだと思っています。

特許の仕事をしていると、私のように技術者から知的財産の仕事に関わるようになった方と多く出会います。私の在職した大手メーカーの知的財産室も9割が元技術者の方であり、その大半の方が研究所などの研究開発職を経験した方たちでした。

さて、そんな技術者上がりの私が知的財産室に配属されて戸惑ったことは、知的財産にこれから関わっていく方にも参考になる経験と思いますので、そのお話しをさせていただきます。

知的財産室に配属されて特許の出願の担当となって戸惑ったことは「上位概念化」という考え方です。技術者時代の私は特許というものをずいぶんと漠然ととらえていました。そのため、自分の発明をそのままに特許の請求項とすればよい、と考えていました。しかし、知的財産室の方々、また弁理士や特許技術者の方は、広い権利範囲とするため、その発明をいかに上位概念化するかということをまずお話しされます。発明を生む技術者と、その技術者の発明を出願する方の発想のギャップに最初はたいへん驚きました。

上位概念化というのは簡単に言えば一般化です。「鉄材」を「金属材」と言えば、より広く材料を包含するので上位概念化できたと言えます。しかし、ただやみくもに上位概念化すればよいかというと、上位概念化すると先行技術が含まれる概念まで入ってきてしまいます。上位概念に先行技術が含まれる場合は、特許は拒絶され権利化できません。

そこで、どこまで上位概念化するか、どういう上位概念化するか(例えば、鉄材を金属材と上位概念化するか、板材と上位概念化するか)など、その点を知財担当者と発明者は議論して詰めていきます。発明者の自分の発明だけに目が行っていた技術者時代ではあまり思考することの無かった考え方でした。

私は、技術者時代は特許の権利範囲を漠然と捉えていましたし、特許を成立(権利化)させるための取り組みに対しては考えも及びませんでした。そんな私が技術者の発明を拾い出し特許にしていった経験を、今後、記事にまとめさせていただき、知的財産に興味のある技術者の方の参考になれば幸いです。