新家達弥
新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 監事

前稿で、イノベーションの 7 つ機会について説明したが、機会を見付けたら、その機会を実際のイノベーションに具現化するのが次のステップである。そのために、「なすべきこと」や「なすべきでないこと」がある。

では最初の、「なすべきこと」であるが、五つある。

第一は、イノベーションを行うには7つの機会について徹底的に分析しておかなければならないことである。イノベーションの分野が異なれば、機会の種類も異なり、また時代が変われば機会の重要度も変わるので、その機会が本物であるか分析することが必要となる。
その際に、前稿のその3に記載した問いを再度確認することである。

即ち、
(ⅰ)この変化はなぜ起きているのか:何故、この製品の売り上げがあがっているのか?
何故、この商品は売れないのか? 何故、外部の変化(出来事)が起きているのか?
何故、ギャップが存在しているのか? 何故、プロセスの欠陥や非効率が解決出来ないのか? など「なぜ」「なぜ」を何回も繰り返すことで、変化の原因が把握でき、その解決のために、「何を」「どのように」といった解決策も具体化できてくれば、イノベーションの姿もより明確になる。

(ⅱ)これを機会として利用することは、自社にとって意味があるか:イノベーションの姿が明確化した時に、これは自社が取り組むべきことか、自社で出来ることか、自社にとって意味があるかを確認する必要がある。

(ⅲ)その行き着く先はどこか:自社で行うとした時に、そのイノベーションのゴールはどこなのかを掴んでおく必要がある。「どこまでやるのか」と言い換えることもできる。

(ⅳ)機会を掴むために何を行なわなければならないか:何をしなければならないかを具体的に計画し、実行して行かねばならない。自社で出来ること、外部の協力を得ること。 例えば、技術的援助、金融的援助、人的援助などがどの程度必要になるかを明確化してその実現のためには、何をしなければならないか、など。

(ⅴ)それによって仕事の仕方はどう変わるか:イノベーションは、社会に対して新しい付加価値を提供することであり、当然のこととして既存のビジネスモデルでは対応できないことがある。そのために仕事の仕方もイノベーションに最適なものに変える必要がある。ビジネスモデルが変わってくることは、自社の組織なども変えてゆかねばならない。それを怠ると最適なビジネスモデルを構築した他社に駆逐される恐れがある。

第二は、理論的な分析に加えて、知覚的な認識もすること。このために、現場に出て、見て、聞いて、問いかけることをしなければならない。所謂「3現:現場、現物、現状」を把握することである。右脳も左脳も使い、数字を見ると共に人((顧客やニーズ)も見る。

「百聞は一見に如かず」「百見は一触に如かず」の例えがあるように、現場のニーズ、課題を直に把握することは、顧客にとって価値のあるものを提供する上で、欠かせない。
中小企業の強みである、現場を良く知っている知恵に理論的分析を加味することが、イノベーションを成功させるために必要である。

次稿で、「なすべきこと」の第三番目以降を説明する。