新家達弥
新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 監事

これまでは、産業や市場の内部要因に着目した機会であったが、社会や知識など外部環境に現れるイノベーションの機会があり、その一つが、すでに起こった未来といわれる「人口構造の変化」である。これは、緩やかな変化のため皆が気付いているが当たり前となり、あまり意識に登っていないが、非常に重要な事実であることはいうまでもない。

人口構造の変化は、人口の増減、年齢構成、雇用など変化が明白であり、見逃すこともなくその変化は逆転することもなく、変化の予測も容易で、影響がでるリードタイムも明らかである。このため、この変化によりどの様な事態が起きるかを予測し、自社にどのような影響を及ぼすかについて早期に検討し対処することでイノベーションの機会をものにできるかが問題となるが、一方で事業として成功するためにはそのタイミングも重要である。

当然のことであるが、日本や欧米各国は人口の増加は無く、むしろ減少しているが、開発国ではまだ人口が増えている国もあり、もし中小企業がグローバルに事業展開をしているのであれば、事業としてみると変化に対応する市場が形成される時期は、国により異なるので注意を要する。

人口構造の変化の中で、特に注意するのは年齢構成であり、その中で最大の年齢集団の変化(即ち人口の重心の移動)が重要となる。年齢集団ごとに、価値観も異なり、また典型的な行動形態があるので、これに対応して商品も変化してゆかねばならない。この時に、現場に行き、見て、聞いて変化の実態をきちんと掴むことがイノベーションの機会となる。

日本の場合は、少子高齢化が顕著であり、生産人口の減少、非生産人口の増加に対応して行くことが大きな問題となっている。このために生産性の向上が欠かせなく、これを解決するイノベーションが成功するチャンスが大きい。

しかし、この生産人口の減少は、統計的には 30 年以上前から明らかにされ、警告されていたことでもある。そして、当時は一部の製造業で問題となり、自動化設備やロボットの導入がされて、そのニーズに対応した関連企業が業績を上げてきた。現在は、間接部門も含めた労働人口の減少対策が必要になっており、更に高齢者を介護する人も不足していることから、これに対応する高度な機能を持った介護ロボットやRPAに代表される業務効率化システムなどの新しい労働の担い手が期待されており、この機会を活用できる中小企業は伸びるチャンスがある。

労働人口の減少は、中小企業においては、自社の労働力不足として切実な問題である場合も多いので、これの解決策を生み出せれば、自社のノウハウを活かしたイノベーションを起こすことも可能である。例えばテレワークを使った生産性の向上などは有望である。

IT技術(デジタル技術)を活用して行くことが不可欠な時代となってきているが、中小企業の中にはIT技術を持つ人材が不足している例は多い。このため、IT技術を使いこなす人材を育成しつつ、自社事業のIT資源を高め、その応用展開を図ってゆく上で、オープンイノベーションで述べた外部組織との協同化も視野におき、人口構造の変化に対応してゆくことも必要である。

第六の機会である「認識の変化」は次稿で説明する。