新家達弥
新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 監事

ドラッカーは、イノベーションを実現するための機会が 7 つあり、これを見付けて対応することが重要と説いている。
そして、イノベーションのための機会として以下の 7 つを挙げている。

  1. 予期せぬこと
  2. ギャップの存在
  3. ニーズ
  4. 産業と市場の構造変化
  5. 人口構成の変化
  6. 認識の変化
  7. 新しい知識の出現

そして、この並びの順番も意味があり、若い番号程イノベーションを実現できる確実性が高いとしている。7 番目の新しい知識の出現とは、研究開発による発明・発見やこれを応用した技術革新を意味しているが、これはリスクが高く確実性の点では低い評価になっていることが注目される。

確かに革新的な技術開発の陰には多くの失敗があり、豊富な資金力のある大企業でなければ技術開発に取り組むことは困難と言える。中小・中堅企業がイノベーションを実現するためには、リスクの高い「新しい知識」の機会よりも並び順の早い項目に着目して取り組む方が良く、無理に技術革新に挑戦する必要はない。

なお、この7つの機会は、お互いに重複していることもあり、それぞれが独立したものでないことに注意する必要がある。例えば、高齢化による⑤の人口構成の変化は、生産人口の減少や介護ニーズの増大などにより、④の産業と市場の構造変化に影響を与えている。イノベーションを実現させるためには、単眼的アプローチではなく、複数の機会を分析する複眼的な取り組みが重要である。

当然、自社の能力だけで対応出来ないケースもあり、やりたいイノベーションを実現させるのに力不足の場合はオープンイノベーションを検討して行くことが必要である。

オープンイノベーションとは、大学、国や地方自治体の研究開発機関、異業種の企業などと提携し、自社に足りないアイデア、知識、技術を組み合わせることで新たなビジネスを実現して行くものであり、中小・中堅企業が取りえる有益な施策である。但しオープンイノベーションには、シナジー効果による迅速な成果の獲得というメリットがある一方で、アイデアや技術の情報漏洩のリスクなどのデメリットもあることを理解して、取り組むことが必要である。そのため、オープンイノベーションでは、自社の特許は可能な限り事前に権利化の処理を済ませておくことは必須である。

では、話を戻して、具体的にはどの様に7つの機会を見付けてゆくのが良いかを順に説明してゆく。

まず、①の「予期せぬこと」であるが、これには3つの種類がある。
即ち、1)予期せぬ成功、2)予期せぬ失敗、3)予期せぬ外部の変化、である。

これは、下記文献も追加参照し、次回の稿で説明する。

参考文献:ドラッガーの「イノベーションがわかる本」中野明 著,秀和システム、「ビジネス理論」集中講義 安部徹也 著、日本実業