新家達弥
新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 監事

4)価値創造戦略は、商品の用途や価格、対象顧客、価値などを変えることで、新しい市場や業態を創造する戦略である。商品やサービスは昔からあるもので良く、それらを新しい何かに替えることで、効用や価値、経済的な特性の変化を起こすことである。この戦略はイノベーションを利用するのではなく、イノベーションを起こす戦略である。
この戦略は、①効用戦略、②価格戦略、③ソリューション(課題解決)戦略、④価値戦略の四つがある。
① 効用戦略は、顧客が真に欲求するもの、ニーズを満足するものを提供することでイノベーションを起こす戦略である。
② 価格戦略は、商品価格を顧客が評価する価値に合うように、設定に工夫を凝らしてイノベーションを起こす戦略である。即ち供給者にとってのコストではなく、顧客にとっての価値に合わせた価格に設定し、事業が成立する方式を考えることである。また、新製品の市場投入で、故意に高価格の設定をして富裕層などをターゲットにするスキミング価格戦略と徹底した低価格の設定をして製品の市場への浸透を速やかに図るベネトレイション価格戦略も製品の知名度を広めたり、ブランドを確立する戦略と合わせて行う例がある。特に、スキミング戦略は創業者利益の恩恵に預かれる半面、他社の参入機会を与えることになるので、価格設定は損得を分析して実施する必要がある。
③ ソリューション(課題解決)戦略は、顧客が抱える問題点を機会として、解決するイノベーションを起こすものである。顧客の事情を配慮し、顧客の事情に合わせ、役に立つことをすることが重要である。
④ 価値戦略は、顧客は何を価値があると考えているかを分析し、その価値を提供できるように商品やサービスの定義づけを変えてイノベーションを起こすことである。
一般的には、商品やサービスの定義づけを変えてイノベーションを起こすために、顧客にとって今までなかった魅力的要素(機能)や不要と思っていた要素(機能)を加算または減算する四つのアクションが必要である。
四つのアクションとは、①Raise(業界標準以上の要素を大幅に増やす)、②Create(これまで提供されていない要素/魅力的要素を新たに付け加える)、③Reduce(標準と思われている要素を大幅に減らす)、④Eliminate(従来常識となっている要素を取り除く)である。
ここで、それぞれのアクションで増減させる要素が何かを分析し決定しなければならないが、これは簡単ではない。一つのキーワードとして「差別化」があるが、イノベーションを起こすには業界で常識となっている要素をそぎ落としたり、未知の要素を付け加えることが不可欠である。
以上から、イノベーションを起こすためには、事前に十分な調査分析が必要ということ、またその後も環境の変化に注意することが必要なことが理解できると思う。そして、調査分析のためにはマーケティングの重要である。
ドラッカーも、事業の目的は「顧客の創造」であり、企業が顧客を創造するための基本機能は、「マーケティング」と「イノベーション」の二つだけと強調している。つまり、顧客が不便・不満を解消したい、あるいは欲しい/買いたいと思っているニーズを調べ(マーケティング)、顧客が買いたいものを、買いたいようにし、買いたい機能、買いたい価値/価格で用意する(イノベーション)、顧客にそのものの価値/価格を伝えることで新しい顧客を創造し、顧客の継続購入を維持する(マーケティング)、これによって事業の目的を達成し、利益を生み出すことができる。
イノベーションは、顧客のために何を行うかによって、値打ちが決まる。