新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 会員

革新的なアイデアの発想法

 革新型の場合は、従来のモノやプロセスを大きく変えること、そのためには、革新的アイデアを発想し、イノベイションを起こし、新しい価値を創造することが期待されている。
 まずは、革新的なアイデアを産み出す発想法について述べる。
 従来と異なる革新的なアイデアを発想するには、アイデア発想力を高める発想技法を活用するのが良い。
 発想技法には個人技法と集団技法がある。前者はチェックリスト法が、後者はBS(ブレーンストーミング)がよく知られている。代表的なものは、自由連想するものとしてBS法が、強制連想するものとしてチェックリスト法、特性列挙法、KJ法が、類似性を手掛かりにするものとしてNM法などがある。そのなかでよく使われるのは、オズボーンのチェックリストである。
 発想のイロハとしては、オズボーンのチェックリストを勧める。これは、「チェックリスト9か条」として参照されているもので、
1.転用(Other uses):改変・改良して(またはそのままで)、他に用途はないか/使えないか?
2.適合・応用(Adapt):他にこのようなものがあるか? 過去に匹敵したものは何か/利用できないか?
3.変更(Modify):色・形・音・匂い・意味・動きなど、新しい視点で考えられないか/ないか?
4.拡大(Magnify):大きさ・時間・頻度・高さ・長さ・強さを拡大できるか/したらどうなるか?
5.縮小(Minify):より小さくできるか?携帯化できるか?短くできるか?省略できるか?軽くできるか?
6.代用(Substitute):他の材料で・他のプロセスで・他の場所で・他のアプローチで・他の誰かで・異なった成分でなど、他の何かに代用できないか?
7.再配置(Rearrange):要素・成分・部品・パターン・配列・レイアウト・位置・ペース・スケジュールなどを変えられないか?原因と結果を替えられないか?
8.逆転(Reverse):逆(正反対)にできないか? 後方(前方)に移動できないか? 役割を逆にできないか?ターンできないか?反対側を向けられないか?マイナスをプラスにできないか?
9.結合(Combine):組合せられないか?目的や考えを結合できないか?一単位を複数にできないか?
である。
 そして、これから生まれたアイデアが付加価値を向上させるものか、アウトプット/インプットが正であるかを評価してゆく。
チェックリストのメリット・デメリット
このチェックリストは、あらゆる状況・条件、使い方に対して万能というわけではない。使い方によって下記のようなメリットや副作用のようなデメリットが生じることがある。
チェックリストのメリット
 • 複雑な問題と向き合うとき、検討事項の漏れを防ぐことができる。
 • 過去の経験もふまえて整理していくことで、内容を充実させていくことができる。
 • 他の人と意見交換においても、項目に沿うことで視野や発想を広げることができる場合がある。
チェックリストのデメリット
 • 項目だけに頼っていると、それ以外の問題を見落とす可能性がある。
 • 案件の本質/性質を理解せず、不必要な項目までチェックすると、余計な時間がかかってしまう。
 • 自分やメンバーがチェックしやすい項目ばかりに注力してしまう。それにより、視野が狭くなって、かえって発想の機会を損なってしまう。

 上記のチェックリストを参考に自分なりのチェックリストを作ってみるのが良い。例えば、「**化をする」とする発想である。上記の9か条は、「**化」と見ることも出来る。そうであれば、これ以外にも身近な所で、見方や言葉を変えると、例えば、転用や変更は「変身」「化身」「分割化」「見せる化」「秘密化」「削除化」など身近な別の言葉をヒントに考えて見るのも良い。もちろん小型化・縮小化・大型化・拡大化、薄型化、軽量化、などの従来の「**化」で検討するのも良い。あるいは四則演算で何かと何かを足したり、引いたり、掛けたり、割ったりするのでも良い。身近な所からの視点でアプローチすることでヒントになり、アイデアが生まれる。沢山のアイデアを出しても、具体案にまで採用されるのは少ない(20のうち一つか二つ)ことを承知して考えて行くことで、その先に革新的なアイデアが生まれる。
 革新的なアイデアは簡単には生まれない。そしてアイデアを具体化するまでに多くの努力が必要である。個人で限界がある場合は、ブレーンストーミングをすると複数の人のアイデアが集まり、複眼的な検討が出来る。これにより発想の領域を広げて革新的なアイデアを生み出し、そして、商品の付加価値を向上させて頂きたい。
 最後に、「アイデアのつくり方」についての著者であるJ・W・ヤングの「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」という言葉を座右の銘として、硬く考えずにリラックスして生産性を向上させ、顧客にとっても付加価値を産むアイデアを創造して欲しい。

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