新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 会員

生産性向上の改善型活動例

 具体的な項目での改善活動については、種々のやり方があり各企業で実践し、発表されている例も多いと思われるが、イロハであるので代表的なものを以下に示す。

小集団改善活動;3現(現場・現物・現物)主義のボトムアップによる業務の改善活動であり、QCサークル活動として企業活動の代表でもある。また関係団体も多いので活動の支援も得やすい。活動の成果を上げるためには、経営層を含めた組織全体での取り組みが必要であり、QC的なものの見方や考え方を理解して推進するのが有効でPDCAのサイクルを回す。活動では、問題解決型、課題解決型、施策実行型によって手順の使い分けが必要と言われている。
 但し、QCサークル活動はそれなりの規模の組織で行われている例が多く、小企業では無理に実施する必要はなく、自社に合った改善活動と判断したら採用するのが良い。
3M改善活動;業務の効率向上を目的に、ムリ・ムダ・ムラに絞り、その抽出と削減を図る活動で改善の原点として最初に取り組む基本的な活動でもある。ポイントは5Sと合わせて、ムダを見える化し、その排除を優先して行う。
カイゼン6ステップ;6ステップとは、工程距離の短縮化(5Sやレイアウト変更などを含め)、工程内の同期化(作業改善などによるサイクルタイム差の改善/平準化)、合流点の同期化(メイン工程とサブ工程を含めた全行程の同期化)、不良の撲滅、歩留まり向上、流れの最速化である。
ECRSの改善原則;前稿で述べたが、排除(Eliminate)・結合(Combine)・交換(Rearrange)・簡素化(Simplify)でこの順番で工程改善を図るのが基本である。排除が最も改善効果が高く、次に結合→交換→簡素化の順に取り組むのが効率的とされている。
4Mの見直し・改善・削減;生産活動の要素である「材料/Material、人/Man、方法/Method、設備/Machine」のそれぞれについて、3MやECRS、「**化」などの視点から見直しを行い、改善や変更・削減などを実施する。
製品設計改善;製品の生産性構造設計による部品集約/一体化などによる部品数の削減や製造方法の見直し(材料費、購入部品費、加工費の削減)を行う。DRなどで分野の異なる専門家の知見を吸い上げる。特に部品の機能に着目して、構造の見直しをするのが有効である。設計部門が主体的に活動して行くことが望ましいが、生産技術部門が主となっても可能である。既設計の転換を求められるので柔軟な発想が必要である。
工程設計改善;工程削減/改善を目的に、3M改善などの視点から見直しを行い、整流化することで、加工時間、加工人員、加工設備の削減、新設備導入による効率化、中間在庫やST改善などに繋がる改善が実現できる。
FA;作業の自動化/省力化/高効率化により、製造人員の削減、LTの短縮、工程内在庫の削減、作業品質/製品品質の向上や均一化などを行う。自動化設備等の新たな投資が必要な場合が多いので、効果の見極めが求められる。
バリューチェーンの改善;バリューチェーンを見える化、データ化して現状課題を把握した後、課題の大きい所からチェーンの統廃合や削減、スキップなどによるチェーン内経費の削減をして行く。
見える化;作業の標準化やドキュメント化の徹底による属人的バラツキの削減、ノウハウの継承容易化など、全ての改善において関係者の意識を共有するためには見える化は必須である。そのためにもドキュメント化、データの定量化が不十 分な場合は最初に実施する。
IT化;情報システムの構築と活用(バーコード、RFID、QRコード、GPS8,ビーコンなどの活用と4Mの位置・状態情報把握、時刻情報の分析活用、モノの流れの見える化、品質分析と対策強化、MES(製造実行システム)と連動したデータ収集と分析による工場のパフォーマンス評価等)の優劣が企業の生き残りの条件になってきており、自社に合ったDXを構築して行くことが不可欠である。
人材研修;社員のモチベーションの向上、スキルアップによる作業/業務の効率化、ノウハウなどの技術蓄積の伝承化、ソフトウエア人材の強化など人材の育成/強化は重要な経営課題である。いずれにしても人材研修の活動は長期的に取り組むものであるが、そのためには企業は生き残れる経営を持続してゆかなければならない。
 ドラッガーは、生産性を向上させる条件は、大きなものだけでも以下の6つあると説いている。この6つは研修目的に盛り込むべきと考える。即ち、①仕事の目的を考えさせる。②生産性向上の責任を負わせる。③イノベーションを行わせる。④継続して学ばせる。⑤量より質であることを理解させる。⑥彼らをコストではなく資産として遇する。
改善活動において、「人材研修」は大切な活動である。

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