新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 会員

ビジネスモデルとヒット商品のヒント

 自社のビジネスモデルの再構築は重要であるが、それにあわせて商品が売れなければ収益に結びつかず意味がないこととなる。ヒット商品を創造するのがビジネスモデルの再構築より先ではないか?との疑問も出る。そうなると「ニワトリが先か卵が先か」の話になってしまう。いずれにしてもヒット商品を生み出すにも「王道はない」。
 しかし生み出すヒント/ステップはあるといわれている。(参考文献;ヒットの原理、高杉康成、日経BP 社)
一例として、3つのT を分析してヒット商品のプランを練る3T 分析が参考になる。3T は「市場動向(Trend)」「顧客ターゲット(Target)」「自社技術・ノウハウ(Technology)」である。
 3C 分析と似ていると感じるかもしれないが、最初のT はまず市場動向の分析である。世の中のトレンドをピックアップし、これと整合するものを商品として検討する。言い換えると、世の中のマクロなニーズにマッチしたものでないと良い商品でもヒットしない。そして、世の中のトレンドはひとつではない。例えば、現在であれば、在宅(リモート)トレンド、個食トレンド、時短トレンド、簡単手抜きトレンド、SNS トレンド、ジェンダートレンド、環境重視トレンドなどなどいろいろある。それにマッチした宅配サービス商品、小分け電子レンジ対応食品、インタネットサービスなどがヒットした商品として存在している。
 次の顧客ターゲットの分析では、どのような属性の顧客を狙うのか、その属性の顧客のニーズは何かを分析することが課題となる。ミクロニーズの分析と考えても良い。例えば、トレンドに敏感な若者か、高齢者かなどで、少子高齢化社会が続くのであれば高齢者層はターゲットになる。しかし、高齢者でも趣味の多いアクティブな層か、健康を第一とする層か、介護が必要となっている層かなど、どの層の属性かでニーズは異なり、求められている商品・サービスも違ってくる。またその購買ボリュームも変わってくるので、自社の商品やサービスがそのターゲットにフィットするか、強みを持つか等、検討する必要がある。
 最後の自社技術・ノウハウの分析では、自社が持っているコア技術やノウハウがあるのか、それはどの程度他社差別化、又は顧客への訴求力があるものかを的確に把握・抽出出来ているかが重要となる。SWOT分析での「強み」と「機会」を活かす、SO戦略に繋がる。
以上の3つの項目を分析して、具体的な商品・サービスのプランを立案してヒット商品に繋げてゆくのが3T 分析アプローチであるが、逆に、現在の商品や開発 検討中の商品・サービスが、ヒットするためには、最低限3T 分析ができているかを確認しておく必要があると言える。またこれは、前稿での、「「Who What How Why 」を突き詰めて行くこと」が出来ているかを検討するのと同種のアプローチとも言える。そして「顧客にとって価値あるもの」になっていることに注力しなければならない。
 ビジネスモデルもヒット商品も3 つのT の変化(外部環境や内部環境の変化を含めて)に伴っていつかは衰退することは避けられない。このためにもビジネスモデルの再構築は避けて通れないと覚悟して、以前の投稿で述べたように、クロスSWOT を見直しして、その時点での状況把握やそれに対応する戦略の再検討をしてゆく作業を絶えず行っている企業や変化・改革を継続して行く企業が競争に生き残り、成長を維持して行ける。立ち止まっては成長も止まってしまうことになる。
 またモノづくり力のある企業は、これからは商品の価値を機能的価値(数値で比較できる性能や機能)より意味的価値(顧客がその商品を持つことに意味あるものとして評価する価値;例えばブランドや商品コンセプト、自尊心・自己満足が持てるもの)を高める「価値づくり」に戦略をフォーカスすることが、ヒット商品づくりではより重要となってきている。
是非、モノづくり力のある企業は「価値づくり力」を鍛えて、「モノづくり力」との両輪で、その強みを活かすビジネスモデルを構築して頂きたい。

 (MOTIP 新家;nt-pro.office@ja3.so-net.ne.jp)