田脇康広

㈳技術知財経営支援センター 会員

最近省エネやCO2削減関連の相談が増えました。分かり易いのは、電気代が1年余りの間に倍増したので、省エネでコストダウンしたいという切実なものです。この場合は、解決策も比較的明快です。
厄介なのは、取引先からCO2排出量の報告や削減計画(SBT設定)を求められたというものです。昨今のCO2管理の対象が、自社の排出(直接排出はScope1、間接排出はScope2)に加え、それ以外の排出(原料の採掘から物流、使用、廃棄までの排出をScope3)を合算して製品のライフサイクル全体に拡大したためです(図1)。

図1.ライフサイクル全体の排出量(=Scope1+2+3) (出典:環境省HP)

取引先への回答が難しければ、具体的な条件や手順について依頼元の担当者に確認すれば解決できそうですが、その担当もサプライチェーンの上流の会社の要請を伝えただけで、納得できるだけの説明ができないというのが実態のようです。

2006年7月に欧州のRoHS(ローズ)指令が施行されました。最近の温室効果ガス(GHG)排出削減の取組みが私にはRoHS指令と似たような構図に見えます。RoHS指令は製品に含有される有害物質(鉛、水銀など)が、廃棄されて酸性雨に晒されると環境中に溶け出し健康被害を起こすリスクがあるための対策です。この論法で、有害物質をGHGに、健康被害を気候変動、地球温暖化に置き換えるストーリーは同じです。

RoHS対応では前例がなく、有用なツールやデータベース等もない中、我が国ではそれぞれの事業者が自ら調達した部材を片っ端から蛍光X線分析しました。結果論ですが、日本全体で見たら膨大な経営資源を投入し、とんでもない重複作業をしていたことになります。

温暖化対策でも同じような過ちを犯そうとしているような気がしてなりません。現在国際的な手順としてGHGプロトコルがありますが、重要な決め事をする際に自由度が大き過ぎるため、得られた結果を活用できる場面はかなり限定的だと思います。
これを回避して効率的・合理的に温暖化防止を達成するためには、現場が戸惑うことなく行動を起こせるルール、ツール、DBなどの整備と、グローバルで大きな視点での合意形成、情報共有が必須です。
わずかであっても温暖化防止に関わった者の一人として、貢献できることがないか、常に意識して行動したいと思っています。