日本企業を取り巻く経済環境は、年々厳しくなってきている。このため、企業が生き残るにはイノベーションが必要であると言われてきている。
しかし、イノベーションを起こせるのは大企業であって、中小・中堅企業はその力はなかなか持てないと諦めている企業の経営者は多いと聞く。しかしその考えには大きな誤解があり、中小中堅企業こそイノベーションの機会を身近に持っているのではないだろうか?
まず、イノベーションは、日本では過去に「技術革新」と訳されたことから、革新的発明と同義的に捉えられて、自社ではそのような発明を生み出す研究開発の資源はないと考えている経営者が多いと聞くが、イノベーションは革新的発明だけではない。
イノベーションとは何かを知るためには、この言葉の元祖であるシューペンターの考え方を理解するのが良い。彼の著書「経済発展の理論」(岩波書店)の中で、イノベーションは、「経済や社会の革新」であり、経済や社会にインパクトを与える変革をもたらす新しい創造全般を指している。そして「新結合」がイノベーションに重要と見なしている。
新結合は、「世の中に存在しているものから、新しい価値のあるものを組み合わせること」と言い換えることができる。即ち、発明とか技術革新に限られることなく、今ある製品、プロセス、仕組み、方向、組織、財貨、古い特許などを新結合し、より新しい価値が生み出され、革新的な経済発展がなされるとき、これをイノベーションと呼ぶ。例えば、新結合により生まれた新しい財貨の最近の例では、スマートホンがある。
研究開発資源が少ない中小・中堅企業でも、発明や技術革新でなく、価値のある新結合を行うことで、小さなイノベーションを生みだし、それを大きく育てることはできるのではないか? なお、ここで大切なことは、イノベーションは顧客にとって価値があるものでなければならないことである。
イノベーションの機会を見付けることができれば、中小・中堅企業でも十分イノベーションを起こすことができ、企業間競争を生き残り発展することができる。
では、イノベーションの機会を見付けるには何に気をつけなければならないのか?これについて、ドラッカーは、「イノベーションのための7つの機会」があり、これを見付けることが重要と説いている。
そして、この7つの機会は市場に近く、その変化に最初に直面する立場にある中小企業の方が早く気が付けると思われるので、これを見付けて対応できる身軽な中小企業はイノベーションを大企業よりも早く実現できる可能性が高い。一方で、大企業は従来の成功体験や現在の主力製品の維持に囚われて、変化が遅れ、又は取り組まないことが多く、所謂「イノベーションのジレンマ」に陥るケースが多く、中小・中堅企業にとっては有利である。
では、7つの機会とは何か? 次稿で、ドラッカーの「イノベーションと企業家精神」(ダイヤモンド社)の著書を参考に説明する。