新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 会員

― 相場格言で思い出す名言 ―

 2025年は、円安に代表される大きな経済環境の変化のある年で、また株式相場も年初来の高値を更新し、企業関係者にとっても経営の舵取りの難しい年でもある。ここで株式相場に関する格言について参考になる名言があるので紹介したい。

①「人の行く裏に道あり花の山」;これは株式投資に興味のない人でも一度は耳にしたと思われる格言であるが、企業経営に関しても通じるものがある。即ち「大勢の人が歩く道ではなく、誰もが歩かない裏道を行ってこそ美しい花が咲く山に出会う」と言う意味は、正に誰もが気が付かず、競合企業も注目していないニーズを見つけて、商品開発をすることが成功の道であると言っている。誰もが注目する商品は参入企業も多く競争が厳しく利幅も多くは期待出来ないが、裏の道を選択することはリスクもあるが大きな果実を得る機会でもある、とこの格言は言っている。その為には人が行かない裏道を知っていなければならないが、このために普段から顧客の潜在的なニーズにアンテナを張り、マーケティングを続けて裏道を見つける努力が必要である。

②「遠くのものは避けよ」「乗り易い馬を選べ」;この格言は、自分が知らない企業に投資するな、身近にある馬(企業)に投資せよと言っているが、それはよく知っている分野や得意とする技術を持っている分野で事業を展開せよと言っていることに通じる。中小企業にとってはニーズがあるからと言って未知の分野に経営資源を投入するのはリスクがあり避けるべきである。得意分野で勝負することを勧める。まずは自社の事業分野で培った経営資源をより強くすることに注力すること、他社との差別化を構築することが重要である。

③「休むも相場」;投資に迷うことに遭遇することがあった時などは休息をすることが必要と言う格言であるが、経営判断に際しても有益な言葉である。自分の都合の良い情報に頼って判断せずに、一息いれて冷静に判断する時間を持つことも必要である。休むための精神的安定剤としてこの格言を座右の銘にしておくもとも有用である。

④「大きく考え、小さく動け」;投資をした後では、リスクを押さえたいと思っても出来ることは限られる。投資先の選別の段階で多くの情報を集めて様々な角度から分析をして(大きく考え)、慎重に投資先に徐々に資金を投じる(小さく動く)ことが大切であるという格言である。特に中小企業では経営資源が限られているので一度に大きな資源の投入は慎重に行うべきである。最初は小さな成功でも良いと考え、そこで想定外の種々の知見をも蓄積して行き、他社が認知していない先行経験をより多く積むことが有益である。特にイノベーションを狙う事業では小さくても成功体験を積み、失敗しないことが重要と言われている。

⑤「一つの篭にすべての卵を盛るな」;分散投資によるリスク軽減の重要性を説いた有名な格言でひとつに集中することなく幅広く投資することの大切さを言っている。中小企業においては他社差別化できる技術/商品を一つ持つことは重要であるが事業経営の変化が激しい環境では一つだけというのはリスクがある。主要商品/技術に力があるうちに次の商品/技術を育てることが必要である。ある経営者が「健全な赤字も大切である」と言っていたが次の主力商品/技術を作り上げるには、一時期は赤字覚悟で進めることも必要になる。これを「健全な赤字」として許容できる体力や文化も時に必要であろう。

その他にも種々の格言がある。
例えば、「もうはまだなり、まだはもうなり」「頭と尻尾はくれてやれ」「相場の資金と凧の糸は出し切るな」「損は切れ、利益は乗れ」などなど。
いずれも、事業経営の関係者にとってヒントになる名言である。

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