新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 会員

十訓(1)

 前稿の品質経営に関連して、近江商人の「三方よし」を述べたが、この近江商人には商売十訓がある。また関連する十訓などを以下に紹介する。

1.近江商人の十訓
1.商売は世のため、人のための奉仕にして、利益はその当然の報酬なり
2.店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の良否
3.売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる
4.資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし
5.無理に売るな、客の好むものも売るな、客のためになるものを売れ
6.良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり
7.紙一枚でも景品はお客を喜ばせばる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ
8.正札を守れ、値引きはかえって気持ちを悪くするくらいが落ちだ
9.今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは寝につかぬ習慣にせよ
10.商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ

 近江商人の十訓は有名で、企業の経営幹部の講話にも多く引用されており、現在でも十分価値のある格言と言えるが、次に紹介する「商売十訓」も良く引用されると聞く。

2.商売十訓―(倉本長治)
1.損得より先きに善悪を考えよう ⇒これは「責任者は信念・主義を持て」と言っている
2.創意を尊びつつ良い事は真似ろ ⇒これは「イノベーションに繋げろ」と言っている
3.お客に有利な商いを毎日続けよ ⇒これは「顧客第一/マーケティングは永遠に」と言っている
4.愛と真実で適正利潤を確保せよ ⇒これは「プロフィットは不可欠」と言っている
5.欠損は社会の為にも不善と悟れ ⇒これは「コスト回収、利潤創出が社会貢献」と言っている
6.お互いに知恵と力を合せて働け ⇒これは「チームワークを大切にする職場に」と言っている
7.店の発展を社会の幸福と信ぜよ ⇒これは「社会と会社成長を共有し共存共栄」と言っている
8.公正で公平な社会的活動を行え ⇒これは「社会を繁栄させるミッションを」と言っている
9.文化のために経営を合理化せよ ⇒これは「向上する経営マネジメントを」と言っている
10.正しく生きる商人に誇りを持て ⇒これは「ビジネスに誇れるビジョンは必須」と言っている

 仕事をする人間として、上記の先人の十訓は折に触れて自戒すべき言葉が多く心すべきであろう。
また、次の十訓も参考になる。

3. プロ十訓(某土木設計事務所)
1.プロとは、仕事に命をかける人である。
2.プロとは、自分の仕事に誇りをもつ人である。
3.プロとは、先を読んで仕事をする人である。
4.プロとは、仕事にムラのない人である。
5.プロとは、時間より目標を中心にする人である。
6.プロとは、高い目標に向かって邁進する人である。
7.プロとは、成果に責任をもつ人である。
8.プロとは、報酬が成果によって決まる人である。
9.プロとは、甘えない人である。
10.プロとは、能力向上のために努力する人である。

 「士業」の看板を背負う者はそれぞれの分野でプロである。プロとしてのアクテビティを持ち、顧客が満足するものを提供するためにも、上記十訓を常に問う心構えは必要である。

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