―ビジネスモデルの事例1―
1)モノづくり企業向きビジネスモデル
事例1:ジレットモデル;カミソリのジレット社が採用したもので、「商品の本体となる部分を格安に提供し、付属品・消耗品を継続的に売ることで収益を得るモデル。」 同様なものに、プリンターメーカーが機器を安くし、あるいはコピー機メーカーが機器をレンタルにし、印刷用のトナー(カートリッジ)の販売で継続的に顧客獲得を図るものがある。一方でプリンターのインクトナーが高いことでユーザーの不満から互換性インクメーカーにビジネスチャンスが出てきているなどの問題もあるので注意が必要である。Who はユーザー、What は利便性/本体性能を活かす付属消耗品の提供、How は本体を安く提供して顧客を掴む、Why は本体が利用される間は消耗品(量産品)で稼げる。
事例2:SPA、垂直統合;製造小売業とも訳されるモデル。製品の企画・デザインから製造、販売までを小売り主導で行い、安くスピーディに顧客に提供。GAP,ユニクロが代表例。ニトリ(家具)、JINS(眼鏡)、カインズホーム(プライベートブランドの日用雑貨)等「安くスピーディ」のために、中間の卸問屋や代理店を中抜きし、また在庫の管理や発注などの業務プロセスに IT を活用したシステムを構築している。Who は消費者、What はお得な価格の提供、How は製造から小売りの一貫プロセス化、Why は中抜きによるコスト低減。
事例3:BTO(受注生産);インターネットを駆使した受注生産モデル。部品の状態で準備しておき、注文を受けてから顧客の要求仕様に合わせて生産(組立)する。PC のデルの成功が有名。デルは、途中のチャネルを省いたことで収益を確保。インターネットによるダイレクト受注や販売も類似のモデル。Who はユーザー、What は顧客要求スペック品の提供、How は顧客が自分で仕様を決められる直接注文品を生産することで顧客を掴む、Why は受注してから生産するのでロスがなく且つ中抜きで稼げる。但し、他社もインターネットを活用した類似モデルを構築しやすい場合があり、競争が厳しい環境がでてくる。
事例4:オープンビジネスモデル;社外とのコラボレーションによって、新しい価値(製品・サービス)を創り出す。インテルは、MPU のインターフェース技術をオープンにしてどのPCメーカーも採用できるようにして販路を拡大した。P&Gは、技術開発ポータルサイトを社外の研究者・専門家にオープンにすることで自社ではアイデアが出てこない画期的な研究開発デーマの発掘や推進を世界的な規模で展開している。Who は業界関係者、What は基盤技術活用/開発情報の提供、How は利活用の情報オープン化、Why は関係業界や関連情報の先行取り込みによる他社参入阻止。
事例 5:アンバンドリング(大田区モデル);企業活動の川上工程から川下工程までの一連の業務の流れ(バリューチェーン)を解体(アンバンドリング)し、自社の強みの特定の業務だけに特化する。大田区の専門企業は、精密加工(切削・研磨など)、プレス加工、メッキ等専門分野を特化した企業が集結して一連の生産工程を分担している。電力会社が発電、送電、配電、小売りの機能を「発送電分離」したのもこの例に該当。Who は関連業界やユーザー、What は専門技術/機能の提供、How は専門の強みを活かして協業、Why は専門分野でのコスト優位性/差別性。
事例6:デファクトスタンダード;自社の製品を事実上の業界標準とすることで、安定した需要を確保し、低コスト化や他社参入リスクの抑制を図る。顧客が増えるとその周辺においてもその製品の使用が前提となり永続性が確保される効果を生む。マイクロソフトのオフィスソフト、インテルのLSIチップ、ファナックのNC制御装置、YKK のジッパーなど。
①Who はユーザー(複数の顧客層)、②What は標準化による利便性/活用容易性の提供、③How 業界標準を支配することで他社参入阻止、④Why は自社製品を購入/組み込まざるを得ない状況を構築、最終顧客がその機能/製品を要求する。
(次稿に続く) (MOTIP 新家)