前稿に続き、「なすべきこと」の第三番目以降を説明する。
第三は、焦点を絞り単純なものにすること。機会を複雑に捉えず、一つのことに絞り、明確で普通の人(顧客)がわかりやすい簡単なものすること。分りやすいことは顧客に訴求し、購入をして貰う上で重要である。
第四は、小さくスタートすること。大がかりな事業構想は上手く行かないことが多い。限られた自社の資源を一点に絞り、限定された市場を対象に小規模な事業から始めるよう心掛ける。新しい事業・未知の分野では失敗することが多い。小規模であれば失敗してもダメージは少なく、また失敗原因が分かり(これが重要である)、再チャレンジできる。特に中小企業は、小さくスタートするのが良い。キーワードは、「small & speedy」である。
第五は、その分野でトップの座を狙うこと。大きな事業をねらう必要はなく、ニッチな市場であって良い。その分野で支配的地位を確保し、競争相手に勝ち創業者利益を享受する。
トップを走ることは、競合他社より先にその分野でのノウハウなどを先行取得でき、これが自社の優位性を高めることになる。
では逆に、「 なすべきでないこと」は何か? 前稿で三つあると述べた。
第一は、凝り過ぎてはならない。イノベーションの成果を普通の人が利用できること。自己満足でなく、顧客に分かりやすい、使い易いものにしなければならない。
第二は、多角化してはならない。一度に多くのことを行うと散漫になり上手く行かない。
特に中小企業は経営資源も限られているので、一点に集中することが大事である。
第三は、イノベーションを未来のために行ってはならない。現時点で利用できるものでなければならない。評論家は将来必要であるというが、その将来は何時なのかは明言しない。
現時点のニーズに応えることから始めるべきである。
次に、イノベーションを成功させる三つの条件について述べる。これらはいずれも当たり前ことではあるがきちんと実行されず、また無視されるので、注意が必要である。
第一は、イノベーションは集中されなければならない。イノベーションは意識的かつ集中的な仕事である。知識や創造性、才能は必要とされることが多いが、勤勉さと持続性、献身もより必要とする。
第二は、イノベーションは強みを基盤としなければならない。イノベーションでは、知識と能力の果たす役割は大きく、リスクも伴うだけに自社の得意とし実績のある強みの基盤(能力、組織、ノウハウ等)で仕事をすることが重要である。
第三は、イノベーションは社会や経済に変化を与えるものでなければならない。消費者の行動やプロセス、働き方をなどに変化をもたらすものでなければならない。
次稿では、イノベーションの機会を実践する戦略について述べる。