新家達弥

㈳技術知財経営支援センター 会員

生産性向上のイノベーション

 前稿で、付加価値を増大するイノベーションを含めたアプローチが必要であると述べた。
イノベーションについては、以前の稿で、イノベーションの機会やビジネスモデルイノベーションなど種々のイノベーションについて紹介したので、それを参考頂きたい。
 特に中小企業にとってイノベーションを起こすのは「身近な7つの機会」を掴むことが重要であり、既存の技術の新しい組み合わせであると考えて、革新的な発明≒技術開発と考えずにシューペンターの「新結合」をキーワードに身近なものから取り組むことが良い。新結合とは、以前のイノベーションの最初の稿で述べたが「世の中に存在しているものから、新しい価値のあるものを組み合わせること」、即ち、発明とか技術革新に限られることなく、今ある製品、プロセス、仕組み、方法、組織、財貨、古い特許などを新結合し、より新しい価値が生み出され、革新的な経済発展がなされるとき、これをイノベーションと呼んでいる。
 以前の投稿原稿にあるように、シュンペーターは「イノベーション」を5つに分けて定義している。
 (1)創造的活動による新製品開発(プロダクト・イノベーション)
 (2)新生産方法の導入(プロセス・イノベーション)
 (3)新マーケットの開拓(マーケット・イノベーション)
 (4)新たな資源(の供給源)の獲得(サプライチェーン・イノベーション)
 (5)組織の改革(組織イノベーション)
 自社にあった新結合、自社の強みを活かす新結合を前項のアイデアの出し方を参考にして、数多く出し、その中で革新的なものを見出してほしい。「下手な鉄砲も数打てば当たる」と割り切り、無責任なアイデアを沢山出して検討することが大切である。
 ここで、「生産性の向上に関するイノベーションでは、付加価値を大幅に高める事が重要である」ことを留意しておかなければならない。また、従来にない画期的な技術革新であっても付加価値を高めなければイノベーションにはならない。即ち、生産性を向上させるイノベーションはアウトプット/インプットが大きな正の値でなければならない。
 付加価値の大きなイノベーションの例として良く引き合いに出されるのが、クロネコヤマトの宅急便である。これはまさしく自社の強みの配送を顧客視点に立った新結合のビジネスとしたもの言える。そして「冷蔵便」、「ゴルフ便」などのサービス、荷物の受け取り側の視点に立った「配達日指定」「受取場所指定」といったサービスに展開して発展した。
 ヒト・モノ・カネのリソースが限られる中小メーカーの場合、イノベーションを起こすのは大変であるとよく聞く。しかし現在の事業環境では事業の生産性=付加価値を高めることが、変化が急速な時代を生き残るうえで極めて重要である。そのためには、外部のリソースをあたかも自社のリソースのように使いながら事業を進める社外連携/オープンイノベーションは、限られたリソースで効果を最大化することにつながり、生産性を向上する有効な手段となる一考に値する。
 イノベーションは、あきらめない愚直な活動の中で花開くことが多い。正に「ABC」である。「当たり前のことを、馬鹿にしないで、ちゃんとやる」

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