― アイデアの発想に困った時 ―
最近は、「イノベーション」の言葉をよく聞く。イノベーションを起こせとか、革新的アイデアを出せとか、新製品や新技術の開発関係者は従来にないアイデアの創出に苦労していることが多い。
この点では、先人もアイデア発想について苦労したようで、出し方や作り方についていろいろな方法でアイデアを練っている。代表的なものをいくつか紹介するが、その他にも多くの方法を先人は残している。
1.オズボーンのチェックシート
これは、ブレーンストーミングなどでアイデアを出す時によく使われるもので、以下の9項目のチェックを行いアイデアを出すものである。即ち、①転用(Other uses):改変・改良すれば(またはそのままで)、他に転用できないか? ②適合・応用(Adapt):他のもののアイデアを使えないか? ③変更(Modify):色・形・音・匂い・意味・動きなどを変えてみたらどうか? ④拡大(Magnify):大きさ・時間・頻度・高さ・長さ・強さを拡大できないか? ⑤縮小(Minify):より小さくできないか? 短くできないか? 軽くできるか? ⑥代用(Substitute):他の材料やプロセスなどで代用できないか? ⑦再配置(Rearrange):要素・成分・部品・パターン・配列などを入れ替えたらどうか? ⑧逆転(Reverse):逆(正反対)にしたらどうか? 後方(前方)に移動できないか? 役割を逆にできないか? ⑨結合(Combine):一体に組み合わせられないか?目的や考えを結合できないか?
2.カエル(蛙)法
オズボーンのチェックリストと同じ発想であるが、「カエル」をキーワードにしてヒントを出すやり方である。例えば、長さをカエル、位置をカエル、人をカエル、手順をカエル、片方だけカエル、角度をカエル、速さをカエル、形をカエル、色をカエル、組合せをカエル、など。身近なところから発想して行く場合によく使われるが、オズボーンのチェック項目は、ある意味で「カエル」ことにつながっており、同じ発想法ともいえる。
3.逆転の発想法
逆の発想を促すことでアイデアを出す方法で、ヒントとなるキーワードごとに「カエル法」を併用して検討してゆくと良い。キーワードは、「上・下」「前・後」「左・右」「内・外」「硬・軟」「速・遅」「押・引」「鋭・鈍」「丸・角」など。先人は型に捉われないように強制的に逆の発想をするよう勧めている。
4.欠点列挙法
身近な不便や不都合などの問題を発掘し、その解決のためのアイデアを発想して行く方法。これは人は日頃から長所よりも欠点を見つけ方が得意であるという特性を活用した方法ともいわれている。
使い慣れているものでも必ず問題点を含んでいるものであり、これを積極的に抽出して解決案を導き、新しい商品を生み出す。例えば、顧客満足に反する「不」のつく言葉をキーワードにして、それを見逃さずに問題点と解決法を考え出す。キーワードの例では、顧客クレームなどから「不満」「不便」」「不平」「不良」「不安」「不足」「不用」「不快」「不親切」「不公平」「不平等」「不十分」「不合理」「不注意」などある。クレームに係る問題の中で、まずは多いものや大きなものから解決案を検討して行くことでイノベーションを起こすことが出きる。
5.希望点列挙法
前項とは逆に「こうしたい」「こうありたい」と言う希望点を列挙し、現状にない新しい価値を生み出して行く方法である。商品やサービスなどについて「こんな風になったらいいな」と希望や理想のあり方を現状の課題などはひとまず横に置いておいて、理想像をどんどん出していくという方法。実際に商品を一つ開発しようと思っても、予算や人材など実に様々な障壁があり、自由にアイデアや意見を出そうとしても、こうした制約や常識が頭のどこかで発想の邪魔をしている場合がある。そんな時に希望点列挙法を使い、あえて現実を離れて考えを巡らせ、新しいアイデアを産み出す。キーワードは、「こうしたい」、「あーしたい」、「こうなれば」、「これは便利だ」、「こんなことが出来れば」、などなど。
以上代表的な発想法を紹介したが、一人でも良いが、これらはブレーンストーミングなどで複数の分野の異なるメンバーでアイデア検討するのが有効である。アイデアの発想法は紹介した以外にも多く存在するのは、先人も自分に合った方法を訴求した結果であろうから、どれが正解であると決めつけずに自分なりの発想をせよと先人は言っていると思われる。上杉鷹山の格言にあるように「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」、まず実行である。
最後に、「アイデアのつくり方」の著者であるJ・W・ヤングの言葉を紹介したい。「アイデアとは既知の要素の一つの新しい組合せ以外の何ものでもない」、アイデアの元になる要素はすでに世の中に存在しているので、だれでもこの既存の要素を従来にない新たな組み合わせを考えることで、新しいアイデアを作り出すことができる。
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